2021.09.21

杭の施工精度確保に対して高リスク条件が重なった施工事例(基礎工2021)

細田光美(ジャパンパイル)、小松吾郎(ジャパンパイル)

■掲載誌:基礎工9月号, pp.35-38「特集:杭基礎の施工ずれへの対処・対策」
■発行所:総合土木研究所
■発 行:2021/9

1.はじめに
 既製コンクリート杭の「施工ずれ」には,①杭の鉛直方向のずれ(高止まり,低止まり),②杭の水平方向のずれ(心ずれ),③杭の傾斜などがあげられるが,主にこの3項目は杭の施工精度確保・向上のための主要かつ重要なファクターである。
 この「施工ずれ」は,掘削孔の造成や杭の建込み・沈設時,いわゆる施工工程プロセスにおいて所定の施工精度が確保できないときに発生する。
 また,施工工程中には管理値以内で想定していたはずが,杭打ち工事完了後の根切り掘削後の計測時に施工精度不良が発覚することもある。特に杭の傾斜は,事後発覚により大きな問題となるケースがある。というのも,この段階では既に現場は,根切り・掘削が進行しているため,傾斜した杭の対処・対策が簡単ではないからである。対処方法としては,①出来形による設計検証により当該傾斜杭の特別採用を模索する,②当該傾斜杭を引抜き撤去後に再施工する,③増し杭を行うなどが考えられるが,②や③での対処は大掛かりなリカバリーとなることが多い。両者のどちらかでリカバリーを実施するにしても,まずは施工地盤を埋め戻すか,現場状況によっては作業構台上からの施工を余儀なくされることもある(写真― 1)。このため,杭打ち機の再搬入出や仮設費用も含め,発生するコストや工期延長への影響は甚大となる。
 本稿では,建築分野のプレボーリング拡大根固め工法 において,杭の施工精度確保(ここでは,主に心ずれと杭の傾斜を取り上げる)に対して支障を来す高リスク条件が重なった施工事例を紹介する。